大統領令による非移民ビザ(H、L、J)の入国停止への例外規定について

トランプ大統領は2020年6月22日、新型コロナウイルス発生後の米国労働市場へのリスクとなる外国人の入国の停止」を公布し、特定の非移民ビザ(H、L、J)およびその家族によるアメリカへの入国を停止しました。

この大統領令により、以下の3要件をすべて満たす場合、H、L、Jでの米国入国が停止されることとなりました。①2020年6月24日時点で米国外に滞在していること②2020年6月24日時点で有効な非移民ビザを有していないこと③2020年6月24日時点で有効な、または発効日以降に発給され米国への入国及び入国申請を認める内容の、ビザ以外の正式な渡航許可証を有していないこと

ただし、米国の防衛・法の執行・外交・安全保障にとって重要である者、新型コロナウイルス感染者の治療に従事する者、米国内の施設において新型コロナウイルス対策のための医学研究に従事する者、または緊急的かつ継続的な米国の経済回復を促進するために必要な者については、「入国することが米国の国益に資すると判断された外国人」であるため、入国制限の例外とすると定めていました。

2020年8月12日に、国務省は新たにNational Interest Exceptions to Presidential Proclamations (10014 & 10052)を発表し、「入国することが米国の国益に資すると判断された外国人」のL,H,J各ビザについての判断基準を明らかにしました。この新しい例外規定より、先の大統領令による入国禁止規定の対象となると考えられていたL,H,Jビザ申請者の一部の入国停止が緩和される可能性があります。

弊社では、特に、入国停止措置の例外となると明示された以下のLビザの例外措置について多くの方からお問い合わせをいただいています。

「重要なインフラ関連事業」に携わる企業における①長年の勤続経験のあるシニアレベルの役員や管理者が重要なインフラ関連事業において不可欠な役割を果たす目的で渡米する場合、または②長年の勤続経験のある高度な専門知識を持つスペシャリストが重要なインフラ関連事業において重要かつ固有な貢献を果たす目的で渡米する場合

ここでいう「重要なインフラ」には、化学、通信、ダム、防衛、緊急サービス、エネルギー、金融サービス、食品および農業、政府機関、医療および公衆衛生、IT、原子炉、輸送、水道システムなどが含まれると規定されています。

解釈によってはかなり広範囲な分野での入国停止の緩和が期待されます。ただし、この例外規定が、実際のビザ審査においてどの程度厳格に運用されるのかは現時点では不明瞭です。大使館は実際に申請された個々のケースごとにビザの認可の可否を判断するというスタンスですので、申請してみないとわからないというのが実情です。いったん申請を却下されますと、申請した個人にはビザ却下歴がつきますので、それ以降の米国へのビザなし渡航ができなくなるというリスクがありますので注意が必要です。

2020年8月12日National Interest Exceptions to Presidential Proclamations (10014 & 10052)https://travel.state.gov/content/travel/en/News/visas-news/exceptions-to-p-p-10014-10052-suspending-entry-of-immigrants-non-immigrants-presenting-risk-to-us-labor-market-during-economic-recovery.html