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F/J/Mビザ保持者の不法滞在の算定起算日が変更されます

米国移民局(USCIS)は、学生(F)ビザ、交換訪問者(J)ビザ、職業訓練(M)ビザ保持者及びその家族の不法滞在(unlawful presence)の算定の起算日に関する新たな指針を発表しました。この指針は2018年8月9日より発行します。

通常、F/J/Mビザ保持者は、入国の際に「Duration of Status」の滞在期間を付与されますが、これはステータスが有効な限り合法的に滞在できるということを意味しています。これまで、Duration of Statusを付与されて入国したF/J/Mビザ保持者の不法滞在については、①他の移民法上の手続きにおいてUSCISが非移民ステータスへの違反があると正式に認めた時、または②移民裁判官が国外退去処分を命じた時、のいずれか早い時点を起算日とするとされてきました。つまり、①あるいは②に該当するまでは不法滞在にはならないと解釈されてきました。

しかし、2018年8月9日より発行する新たな指針により、今後、F/J/Mビザ保持者及びその家族の不法滞在の算定の起算日は以下のように変更されます。

まず、2018年8月9日より前に、ステータス違反が生じていた場合、2018年8月9日より不法滞在期間が開始します。ただし、USCISが非移民ステータスへの違反があると正式に認めた日の翌日、入国の際Duration of Statusではなく特定の期日の滞在期間が付与された場合はその期日の翌日、あるいは移民裁判官が国外退去処分を命じた日の翌日のいずれかが2018年8月9日より前である場合には、そのいずれかもっとも早い時点が起算日となります。

次に、2018年8月9日以降に、F/J/Mビザ保持者にステータス違反が生じた場合には、以下の①から④の要件いずれかに該当したもっとも早い時点を不法滞在の起算日とします。①許可された学習プログラムや認められた活動を中止した、または許可されない活動に従事した日の翌日、②許可された学習プログラムや認められた活動(プラクティカルトレーニング及びグレースピリオド含む)を終了した日の翌日、③入国の際Duration of Statusではなく特定の期日の滞在期間が付与された場合はその,期日の翌日、④移民裁判官が国外退去処分を命じた日の翌日。

この新たな指針により、2018年8月9日以降はF/J/Mビザ保持者は、上記①から④のいずれかに該当した時点で不法滞在となりますので注意が必要です。F/J/Mビザ保持者の同伴家族の滞在期間は、主たるビザ保持者に準ずるとされていますので、F2、J2、M2ビザで滞在されいるご家族は、それぞれ主たるF1、J1、M1ビザ保持者が不法滞在となった時点で同時に不法滞在となります。

尚、F/J/Mビザ以外の不法滞在の算定方法は現行のままとなっています。

追加証拠請求および却下予定通知に関する新たな指針

2017年4月にトランプ大統領は大統領令「Buy American, Hire American」に署名し、「アメリカ・ ファースト」を実現するための移民政策の見直しに、積極的に取り組む姿勢を表明しました。

2017年10月には、ビザの更新申請に関する新たな指針が発表され、更新申請であっても新規ビザ申請と同様の審査基準を満たさなければならないことになりました。

昨年のH-1B専門職ビザ審査では、追加資料の要請が、前年度に比べて2倍以上行われる事態となりました。移民局の統計によれば、2017年11月の申請却下率は17.6%にのぼり、2016年同月の却下率の2倍を超えました。

2018年7月、USCISは、追加証拠請求および却下予定通知に関する新たな指針を発表しました。

https://www.uscis.gov/news/news-releases/uscis-updates-policy-guidance-certain-requests-evidence-and-notices-intent-deny

これにより、最初に提出された申請書に必要な証拠が含まれていなかった場合または提出された証拠が適格でないと判断された場合には、追加証拠請求(Request for Evidence)や却下予定通知(Notice of Intent to Deny)を発行することなくビザ申請を却下する裁量が審査官に与えられることになります。この指針は、2018年9月11日に発効し、当該日付以降に受理されるすべてのビザ申請に適用されます。(ただし、小児就労のための延期措置(DACA)請求のみは例外とされます)。例えば、法律や申請フォームのインストラクションに明記された必要書類を伴わない申請が提出された場合、移民局審査官は、追加証拠請求および却下予定通知を発行することなく、申請を却下することが可能になります。当局側は、審査官に不完全または不適格な申請を却下する裁量を与えることで、審査の効率化を図ることが目的であるとしています。さらに、この指針により、根拠や理由のない申請を抑止する効果も期待でき、審査に要する費用の無駄を排除することができるだろうとも述べています。

一方、今回の指針の変更により、申請書類上の小さなミスが、国外退去処分などの重大な結果を引き起こすことになりかねない、と懸念する声が上がっています。

以上のように、2017年4月の大統領令への署名以降、外国人労働者のビザ審査の厳格化および雇用現場での移民取り締まりの強化が進められています。 移民法の法律自体への改正は行われていませんが、法律の適用の段階での審査基準や解釈が大きく変わってきているため、今後の 動向についても注視が必要です。

Nonimmigrant Visa Statistics 2017

国務省ホームページNonimmigrant Visa (NIV) Statistics内の、FY2017 NIV Detail Table のデータから、各ビザカテゴリーの発給数を知ることができます。

以下、日本人に多く取得されているいくつかのビザカテゴリーについて考察します。

まず、日本人のビザ取得おいて最も特徴的なのは、Eビザの取得件数の多さでしょう。2017年度において、E1(貿易駐在員)、E2(投資駐在員)ビザはそれぞれ全世界で7,063件と43,673件発給されています。このうち日本だけでの発給数はE1が1,543件、E2が14,360件となっており、それぞれ全世界の発給数の21.8%と32.9%を占め、世界一の発給数であることが分かります。日本に続くEビザ取得数を示すドイツでも、E1が1,306件、E2が4,267件となっていますので、日本のEビザ発給数、特にE2ビザ発給数 がいかに突出したものであるかが分かります。 E1E2ビザ合計の地域別発給割合は、ヨーロッパ39%、アジア41%、北アメリカ14%、南アメリカ4%、オセアニア1%、アフリカ0.3%となっています。

H1B(専門職ビザ)に関しては、全世界での発給数179,049件に対して、日本人の取得数は765件、割合でいうと0.4%のみにとどまっています。H1Bビザの年間取得者数はインド人が最多です。2017年度のインド人のH1B取得数は129,097件にのぼり、実に全世界の72%にも及びます。これは、IT業界で働くインド人エンジニアやプログラマーからの申請件数が群を抜いているためです。H-1Bビザを巡ってはその多くが、低賃金のインド系アウトソーシング企業の社員向けに発給されているといわれ、アメリカ市民の雇用を奪っているとの批判がありました。トランプ大統領がアメリカ市民の雇用を促す大統領令に署名し、H1Bビザ審査の厳格化を命じています。2016年度の統計と、2017年の統計を比較してみますと、今のところ数字上に大きな変化は見られませんが今後のH1Bビザの国別発給数の動向には大きな影響が及んでくる可能性があります。トランプ大統領は大統領令の発表に際し「現在、新規H1Bビザは無作為の抽選システムで審査が行われているがこれは過ちだ。」と語り、現行の抽選システムから、学歴や給与水準、貴重な技術を持った申請者に優先的に発給されるプライオリティーシステムへの移行を提案しています。

L1(企業内転勤者)ビザに関しては、全世界での発給数78,178件に対して、日本人の取得数は4,930件、割合でいうと6.3%となっています。L1ビザの年間取得者数は香港人が最多です。2017年度の香港人のL1取得数は22,355件にのぼり、全世界の28.6%を占めています。国際企業が多い香港ですが、中国にはアメリカと通商航海条約に基づくEビザの申請資格がないことなどが影響しているものと考えられます。B(短期商用・観光)ビザには、B1ビザ、B1/B2ビザ、B2ビザがありますが、全世界での合計発給数6,358,600件に対して、日本人の取得数はわずか6,311件のみ、割合でいうと0.1%となっています。日本はビザ免除プログラム対象国ですので、3か月以内ならビザなしでも渡航することができ、当然にBビザの発給数が低くなっています。Bビザの地域別発給割合は、アジア46.7%、南アメリカ25.2%、ヨーロッパ10.9%、北アメリカ10.1%、アフリカ6.7%、オセアニア0.4%となっています。

F1留学生ビザに関しては、全世界での発給数393,573件に対して、日本人の取得数は15,982件、割合でいうと4.1%となっています。F1留学生ビザ合計の地域別発給割合は、アジア68.2%、ヨーロッパ14.6%、南アメリカ6.9%、アフリカ5.4%、北アメリカ4.0%、オセアニア0.8%となっています。世界的に見てアジア圏からのF1留学ビザ申請の件数の多さが目立ちますが、アジア圏内国別にみると、1位中国、2位インド、3位韓国、4位日本となっています。F1留学生ビザに関しては、2016年度より全世界での合計発給数が16.6%も減少しているのが特徴的です。