2017年4月にトランプ大統領は大統領令「Buy American, Hire American」に署名し、「アメリカ・ ファースト」を実現するための移民政策の見直しに、積極的に取り組む姿勢を表明しました。
2017年10月には、ビザの更新申請に関する新たな指針が発表され、更新申請であっても新規ビザ申請と同様の審査基準を満たさなければならないことになりました。
昨年のH-1B専門職ビザ審査では、追加資料の要請が、前年度に比べて2倍以上行われる事態となりました。移民局の統計によれば、2017年11月の申請却下率は17.6%にのぼり、2016年同月の却下率の2倍を超えました。
2018年7月、USCISは、追加証拠請求および却下予定通知に関する新たな指針を発表しました。
これにより、最初に提出された申請書に必要な証拠が含まれていなかった場合または提出された証拠が適格でないと判断された場合には、追加証拠請求(Request for Evidence)や却下予定通知(Notice of Intent to Deny)を発行することなくビザ申請を却下する裁量が審査官に与えられることになります。この指針は、2018年9月11日に発効し、当該日付以降に受理されるすべてのビザ申請に適用されます。(ただし、小児就労のための延期措置(DACA)請求のみは例外とされます)。例えば、法律や申請フォームのインストラクションに明記された必要書類を伴わない申請が提出された場合、移民局審査官は、追加証拠請求および却下予定通知を発行することなく、申請を却下することが可能になります。当局側は、審査官に不完全または不適格な申請を却下する裁量を与えることで、審査の効率化を図ることが目的であるとしています。さらに、この指針により、根拠や理由のない申請を抑止する効果も期待でき、審査に要する費用の無駄を排除することができるだろうとも述べています。
一方、今回の指針の変更により、申請書類上の小さなミスが、国外退去処分などの重大な結果を引き起こすことになりかねない、と懸念する声が上がっています。
以上のように、2017年4月の大統領令への署名以降、外国人労働者のビザ審査の厳格化および雇用現場での移民取り締まりの強化が進められています。 移民法の法律自体への改正は行われていませんが、法律の適用の段階での審査基準や解釈が大きく変わってきているため、今後の 動向についても注視が必要です。